鹿児島から眼科学の技術発展と研究に貢献する 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 眼科学分野

鹿児島市桜ヶ丘8-35-1
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論文名
【サンプル5】
論文著者(共同著者)
宇辰 賢祐, 寺崎 寛人, 坂本 泰二
概略
目的:発症から時間が経過し,重篤な角膜潰瘍を伴ったビタミンA欠乏性眼球乾燥症の1例を経験したので報告する。症例:症例は6歳,男児。母親が右眼の角膜混濁に気づき前医を受診し,眼内炎の診断で精査加療目的に鹿児島大学病院に紹介され受診となった。細隙灯顕微鏡にて,両眼角結膜の著明な乾燥および右角膜潰瘍と前房蓄膿を認めた。問診にて自閉スペクトラム症を伴う発達障害があることがわかり,極端な偏食および夜盲の症状があったため,ビタミンA欠乏性眼球乾燥症と診断しレチノールパルミチン酸エステル(チョコラ A筋注5万単位)筋肉注射5万単位/日を5日間投与したところ,角膜混濁を残して角膜潰瘍は消失し,結膜も湿潤・光沢を認め乾燥所見も改善した。また加療前は血清ビタミンA低値(≦3.0μg/dL)であったが,加療後は31.6μg/dLまで上昇した。結論:ビタミンA欠乏性眼球乾燥症は,本症例のように重篤な炎症を伴うと感染性の眼病変と鑑別が困難となり加療の遅れにつながるため,詳細な問診と当疾患を念頭に置いた眼科的診察がより重要となると考えられる。